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良質の賃貸住宅に求められるものとは?
アパート・マンション経営の先行きが明るいといっても、住宅ストックが充足している以上、競争が激しくなっているのも確かです。
賃貸住宅の入居者は、何も進学、就職、結婚などで新生活を始める人たちだけでありません。「今の住まいが狭いから」「設備や環境が悪いから」などの理由で住み替える人たちも少なくないのです。
飽和状態にある賃貸住宅は、今や「 質の時代 」に突入していると言っても過言ではありません。
その質に見合う賃貸住宅を提供できれば、今の住まいに不満をいだく入居者を惹きつけることができ、安定したアパート・マンション経営につながる のです。
それでは、今の時代の入居者は、賃貸住宅に何を求めているのでしょうか?
ある住宅雑誌が入居者に対して実施したアンケート結果を紹介します。賃貸住宅を選ぶ際、譲れないものと妥協できるもの、必ずほしいものを調査したアンケートです。
賃貸住宅を選ぶ際に譲れないもの
- 1位:陽あたり・風通し
- 2位:内装や設備
- 3位:間取りや広さ
賃貸住宅を選ぶ際に妥協できるもの
- 1位:建築年数
- 2位:家賃
- 3位:建物の外観
賃貸住宅を選ぶ上で必ずほしいもの
- 1位:収納
- 2位:独立したバス・トイレ
- 3位:冷暖房
- 4位:洗濯機置き場
- 5位:追い焚き機能付バス
- 6位:温水洗浄便座
- 7位:オートロック
- 8位:駐車場
- 9位:ガスコンロ
- 10位:バルコニー
もう1つ、賃貸住宅を選んだ理由を調査したアンケート結果がありますので、合わせて紹介します。この結果からも、持ち家派予備軍や持ち家諦め派が少なくなっていることが伺われます。
賃貸住宅を選んだ理由
- 1位:賃貸住宅の方が交通の便が良いから。
- 2位:気軽に住み替えができるから。
- 3位:家賃が安かったから。
- 4位:持ち家を買う資金がなかったから(ローンが不安だから)。
- 5位:転勤が多いから。
質の時代に求められる賃貸住宅の5つの条件
それでは、上記のアンケート結果を踏まえて、質の時代に求められる賃貸住宅の条件 を考えてみることにします。
もちろん交通の便などは、立地条件に左右されますので、今さらどうしようもないともいえます。しかし間取りのプランニングや設備の充実、管理体制の配慮などで、ある程度は立地条件の悪さをカバーできるかもしれません。
私がまとめた質の時代に求められる賃貸住宅の条件は、次の5つです。
賃貸住宅の条件
- ゆとりあるスペース を確保する
- 快適な暮らしを実現する 設備 の充実
- レベルアップさせた 建物の性能
- センスの良いネーミング
- 付加価値 をつける
もっとも重要なことは、入居者は持ち家を買うまでの「つなぎの住居」として賃貸住宅を選んではいないということです。
もちろん少数派としてはいますが、多くの入居者は、より快適で便利な暮らしを実現させるための「 本拠 」として賃貸住宅を考えていることを忘れてはいけません。
ゆとりあるスペースの確保
賃貸住宅には、スペースの狭いものが多いといわれています。標準的なファミリータイプを比較すると、分譲マンションは70m²を超えるものが多いのに対して、賃貸マンションは50m²以下のものが主流です。
その理由は、
かつての住宅難時代は狭くても入居者を確保でき、狭いことが回転率を高め、収益性を向上させたという古い経営姿勢が今も根強く残っているから
だともいわれています。
この真偽はともかくとして。
実際に1戸の面積を広げると、その分が家賃に跳ね返り、家賃が高くなると、入居者の募集に影響を及ぼします。このような事態になることを嫌って広くするのをためらう経営者がいるのも事実です。
しかし前述のアンケートでもスペースは、入居者にとって譲れないものの1つです。狭さを理由に住み替える人も少なくありません。
入居者にゆとりある住環境を提供するためには、最低限として次の面積が必要になるのではないでしょうか。
- ファミリータイプ:1戸50m²以上
- 単身者タイプ:1戸30m²前後
快適な賃貸住宅の暮らしを実現する設備の充実
賃貸住宅の安定経営の条件は、スペースの確保に限ったことではありません。入居者の快適な暮らし を実現するためには、設備の充実と建物の高性能 が不可欠といえるでしょう。
設備については、システムキッチン、独立した浴室とトイレは必須 です。さらにどれだけプラスアルファができるかです。
例えば、入居者の安全対策として、
- 玄関のオートロック化
- 映像付きインターホン
- ガス漏れ警報器
- 煙探知機
などのセキュリティー設備を充実させることです。キッチンに「IHクッキングヒーター」を設置してガス漏れの心配をなくすことも有効です。
洗濯物を外に干さなくても乾かせる「浴室乾燥機」は、女性の入居者に好評です。美観と安全の両方に配慮した設備といえます。
レベルアップさせた建物の性能
耐震性、耐久性、耐火性 などの建物の性能は、オーナーの大切な資産を保全するだけでなく、入居者の安全な暮らしを保障するもの です。
さらに省エネや遮音性に優れた建物は、冷暖房効率を向上させ、入居者のプライバシーを確保するなど、快適な暮らしにつながります。
最寄り駅から徒歩で20分程度かかる200坪の土地にマンションを建てる計画。お客さまは5階か、6階建てを希望したのですが、高さ制限にかかり4階建てマンションを建てることになりました。
資金はすべて借入金。今は金利が安くなっていますので、オールローンでも、どうにか収支プランが立てられます。
徒歩20分がネックとなると思ったお客さまは、こちらが提案した以上に建物の性能と設備を充実させました。
鉄筋コンクリート造りにして 耐震性、耐久性、耐火性、遮音性 を高め、玄関のオートロック化、映像付きインターホンに加えて、IHクッキングヒーターと浴室乾燥機まで備え付けたのでした。
その甲斐あって、完成後僅か3週間で全部屋が満室。標準的な家賃設定だったので、すぐに埋まるか心配したのですが、新築マンションの新しい部屋と最新設備を見て、即決した入居者が多かった ようです。
ネーミングも大切
賃貸住宅のネーミングも、無視できない大切な課題です。
今どき「○○荘」というような「木賃アパート」をイメージさせる名称では、いくら入居者を募集しても、うまくいくはずはありません。
ポイント
ネーミングの良し悪しが商品の売れゆきを左右する時代です。賃貸住宅といえども、決して例外ではありません。
賃貸住宅の外観や規模、ターゲットにする入居者層にマッチするセンスの良いネーミングを考えるようにしましょう。
インターネットが普及した今日、賃貸物件を効率的に探すのに、賃貸物件情報サイトがよく利用されています。
希望する「最寄り駅」「家賃」「間取りタイプ」「建物種別」などの項目を入力して検索すると、合致する物件が直ちに表示されます。その際、物件の名称が真っ先に表示されますので、ますますネーミングが重要視されます。
付加価値をつける
競争が激化した賃貸住宅ビジネスで生き残るには、他と同じことをやっていても、入居者の目を惹きません。
他の賃貸住宅にはないものを提供して、入居者にアピールする戦略が必要なのです。つまり何か他ではやっていない 付加価値 をつけることです。
例えば、次のようなことを考えてみてはいかがでしょう。
- 前述の練馬区のお客さまのように 最新設備をフル装備 で提供する。
- ペット禁止 の賃貸住宅が多い地域 では、ペットの飼育を認める。
- 駅から遠いが、敷地に余裕がある場合は、全戸駐車場付き にする。