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賃貸アパート住宅で起きた事故の責任は?賃貸の契約時と退去時のチェックポイント

更新日:

一人暮らしや新生活を始める際、多くの人が利用する賃貸アパート住宅。しかし、いざ事故が発生した場合、誰が責任を負うのか明確に分からず、トラブルに発展してしまうケースも少なくありません
上階からの水漏れで階下が水浸しになったり、広告看板が落下して車を破損したり、さまざまな事故が発生する場合があります。
本記事では、賃貸アパート住宅で起きた事故の責任の所在について、分かりやすく解説します。また、契約時と退去時のチェックポイントも紹介することで、トラブルを未然に防ぐためのヒントを提供します。

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オーナーは工作物責任を負う

 

賃貸アパート住宅の規模が大きくなると、敷地内に滑り台やブランコなどを設置した小さな公園を設けたり、エントランスにお洒落なアーチやゲートを立てたり、屋外に大きな広告看板を掲げているものも少なくありません。

ですが不幸にして、ブランコの鎖が外れたり、アーチの倒壊や看板の落下で、入居者や通行人が怪我をする事故が発生することがあります。

このような場合、賃貸アパート住宅のオーナーは、どこまで責任を負わなければならないのでしょうか?

 

ここでまず問題になるのが、工作物責任です。

工作物責任

工作物責任とは、土地の工作物の設置や保存の瑕疵によって人に損害を与えた場合、工作物の占有者や所有者が損害賠償の責任を負うということです。

工作物とは、土地上に設置された物で、建物やその付属設備はこれに該当します。

例えば、2階のベランダの手すりが落下して通行人に怪我を負わせた場合、最初に責任を問われるのは占有者、つまり賃借人がいる場合は賃借人です。

ただし賃借人は、損害の発生を防止するための必要な注意義務を果たしていれば、賠償責任を免れることができます。

賃借人が責任を免れた場合、次に所有者が責任を問われることになります。この場合、所有者は、必要な注意義務を果たしていても、通行人に損害が生じていれば、賠償責任を負わなければなりません。

つまり無過失責任を負うことになるのです。

これからは、実際に賃貸住宅で起きた事故の事例を挙げて解説することにします。

 

 

上階からの水漏れで階下が水浸しになったケース

 

上階からの水漏れで階下の部屋が水浸しになり、家具や家電などを壊してしまったケースです。

まず水漏れの原因がどこにあるかを検証します。

賃借人が水道の蛇口を締め忘れていた場合や不注意で洗濯機のホースが外れていた場合は、賃借人は必要な注意義務を果たしていないことになり、階下の被害者に対して賠償責任を負わなければなりません。

さらに建物の所有者に対しても、水浸しによる建物の損害を賠償しなければなりません。

次に水漏れの原因が配管工事の不備であった場合、賃借人に過失はありませんので、賠償責任はありません。

この場合、所有者が階下の被害の賠償責任を負うことになります。

たとえ工事業者の不良工事に原因があったとしても、階下の被害者に対する責任は免れません。

これが無過失責任を定めた工作物責任なのです。もちろん所有者は、賠償した額を工事業者に求償することになります。

 

 

土地活用で失敗しないために

今、あなたがこのページをご覧になっているということは、「 土地 」についてお悩みを抱えているということだと思います。
土地というのは資産の一種ですから、資本・労働・経営と並び付加価値を生み出す生産要素として捉えていた方が多いのではないでしょうか。 ですが、実際に土地を所有すると様々な問題や悩みが生まれますよね。
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広告看板が落下して車を破損したケース

 

所有者が賃貸住宅の管理を管理業者に委託している場合を前提に、賃貸住宅の屋上に設置された広告看板が落下し、通行中の車を直撃して破損したケースを考えてみます。

賃貸住宅の屋上は共有スペースにあたり、通常の占有者は管理人、つまりここでは管理業者になります。

管理業者に過失がなければ、責任を免れますが、建物の管理を任されている管理業者は、屋上の看板が落下しないように注意するのは当然の業務で、それを見過ごしたわけですから、注意義務を怠ったことになり、責任は免れないでしょう。

仮に管理業者に注意義務違反がなかった場合は、所有者が責任を負うことになります。

工作物責任が無過失責任である以上、所有者は過失がなかったことを立証できても、責任は免れません。

 

 

賃借人の過失で失火、隣家まで延焼したケース

 

住宅火災、火事

 

過失のある賃借人は、すべての賠償責任を負うことになります。

しかし賃借人の資力では賠償できない場合もあります。他方所有者は、ローンを借りていれば火災保険に加入していることが多く、保険により建物の損失が補填されます。

この場合、保険会社は、理論上失火した賃借人に賠償額を求償できますが、実際に求償されることは稀のようです。

この賃貸住宅に居住している他の賃借人と所有者との関係は、賃貸物件が消滅した以上、賃貸借契約が終了します。

本来、所有者は賃借人に対して使用収益させる義務を負っていますが、消滅した原因が所有者の責任ではないので、債務不履行の責任は問われません。

失火した賃借人と他の賃借人との関係は、火元の賃借人に重過失がある場合のみ賠償責任を負うことになります。これは延焼した隣家に対しても同様です。

一般的な不法行為とは異なり、失火責任は、軽微な過失では責任を負わされることはありません(失火に関する法律)。

 

 

施設賠償責任保険

 

以上、実際に賃貸住宅で起きた事故の事例で、誰がどのような責任を負うのかを解説しましたが、所有者が工作物責任を問われる場合、たとえ無過失であっても責任を免れることができません

このような事態に備えた「施設賠償責任保険」という保険があり、最近は、加入する賃貸オーナーが増えています。

施設賠償責任保険

施設賠償責任保険とは、建物の欠陥や施設の不備によって他人に怪我を負わせた場合(対人事故)や他人の所有物を壊した場合(対物事故)に、その賠償額を補償する保険です。

保険金が支払われるのは、第三者に対する法的な損害賠償責任が発生したときに限られる点が、火災保険や地震保険とは異なります。

同じような保険に「個人賠償責任保険」がありますが、この保険は、人が他人に怪我を負わせたり、他人の所有物を壊したりした場合を対象にしています。施設賠償責任保険ha

、所有物そのものが損害を与えてしまった場合を対象にしている点で異なります。

注意しなければならないのは、例えば、前述の水漏れのケース

水漏れの原因が賃借人の不注意による場合は、賃借人が加入している個人賠償責任保険が適用されることになります。

他方賃借人に過失がなく、施設そのものの不備によって水漏れが発生し場合は、施設賠償責任保険が適用されます。

ただし補償される範囲は、法的な損害賠償責任が生じた場合に限定されますので、水漏れの原因調査や配管の修理費用などは、補償の対象にはなりません。

 

 

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契約時と退去時に確認すべきポイント

契約時と退去時のチェックポイント

 

賃貸借契約書に記載すべき内容については、「トラブルを防ぐ賃貸借契約書とは?」で詳しく解説していますので、ここでは、契約時と退去時のチェックポイントをいくつか紹介することにします。

まずは、賃貸借契約を締結するときのチェックポイントをまとめました。

 

契約時に確認すること

  1. 連帯保証人の捺印が印鑑証明書のものであるか。連帯保証人が契約に立ち会わない場合は、直接連絡して契約内容を承知しているかを確認する。
  2. 家賃の支払い期日や方法を確認する。当初の家賃は日割りで計算する。
  3. 礼金・敷金・保証金などの性格と返還の有無を説明する。
  4. 契約期間と物件の引き渡し日を確認し、いつ入居するかも確認しておく。
  5. 契約更新時に更新料が必要な場合は、その旨を説明し、契約書に明記する。
  6. 契約更新時に家賃の改定を行う場合は、その旨を説明し、契約書に明記する。
  7. 物件の引き渡しに際して、設備や造作のリストを作成している場合は、リストに基づき貸主・借主双方立ち会いのもとで状況を確認する。
  8. 修理・修繕が必要な場合、貸主が負担するもの、借主が負担するもの、双方で分担するものなど、費用分担を説明し、契約書に明記する。
  9. 契約期間内の解約の取り扱い。予告期間や違約金を設ける場合は、その旨を説明し、契約書に明記する。
  10. 自動車・自転車の所有の有無。駐車・駐輪場所の指定や料金などを説明する。
  11. 電気・ガス・水道・電話などの開設手続きを説明する。
  12. 入居中のトラブルや建物・設備の修理が必要な場合の緊急連絡先を明示する。

賃貸住宅の媒介や管理を業者に委託している場合は、上記の確認は、業者に任せてもよい仕事ですが、どのような確認が必要なのかは、オーナーとしてきちんと把握しておかなければなりません。

次は、契約期間満了や解約で入居者が退去するときのチェックポイントをまとめました。

 

退去時に確認すること

  1. 契約期間内の中途解約の場合、予告期間や違約金を定めているときは、そのとおりの対応を求める。
  2. 家賃の日割り計算と精算方法を確認する。
  3. 設備造作を点検する。入居時に設備や造作のリストを作成している場合は、リストに基づき貸主・借主双方立ち会いのもとで損傷箇所などを確認する。
  4. 借主が費用負担する修理・修繕箇所を業者に見積もらせ、精算方法を確認する。借主が直接業者に支払う場合は問題ないが、敷金で精算する場合は、敷金の返還が遅れることを説明する。
  5. 敷金は、預り金と借主負担の費用を差し引いた明細書を作成した上で返還する。
  6. 電気・ガス・水道・電話・新聞などの料金の精算が済んでいるかを確認する。
  7. 郵便の転送手続きを済ませているかを確認する。
  8. 退去日には、鍵の受けとりも兼ねて立ち会う。ベッドや机などの粗大ゴミが放置されていないか、荷物を搬出する際に建物を傷つけていないかに注意する。

 

退去が完了すると、居室の修繕やクリーニングなどの手配をします。最近は、人手不足から手配に時間がかかり、結果的に空室期間が長くなり、その分が減収になっています。

退去日が決まり次第手配して、速やかに次の入居者の受け入れの準備をしておきましょう。

なお、入居者の長期所在不明による契約解除の場合、家具や荷物を搬出して保管する際は、連帯保証人に立ち会ってもらうのを忘れてはいけません。

敷金の精算や修理・修繕の負担分については、連帯保証人と話し合って決めることになります。

家具や荷物を保管するのにも費用がかかりますので、連帯保証人に引きとってもらうのが良いでしょう。

 

管理規則や入居のしおりで生活ルールを説明

 

住宅のルールでチェックるポイント

 

入居者に決められた共同生活上の規則やルールを順守して快適に暮らしてもらうためには、入居時に「管理規則」などのルールをきちんと説明しておく必要があります。

入居者も、新しい生活を始めるにあたって、必要とする情報、例えば、電気・ガス・水道などの利用開始の連絡先やゴミの収集日や収集場所などを知りたいはずです。

そこで、「管理規則」や「入居のしおり」を冊子にして入居者に配布しておくと、共同生活のルールが徹底されるだけでなく、入居者にとっても便利です。

管理業者に管理を任せる場合は、管理業者がこのような冊子を用意してくれることもあります。

 

管理規則

管理規則の記載内容については、「トラブルを防ぐ賃貸借契約書とは?」で解説していますので、ご参照ください。

 

入居のしおり

ある賃貸マンションが入居者に配布している「入居のしおり」の中で記載されている項目を紹介しますので、作成する際に参考にしてください。

 

○最初に入居者自身で行う必要があるもの

  1. 電気・ガス・水道の利用開始連絡
  2. 住民票の転入手続き
  3. 郵便局の転居手続き

 

生活上の注意点(専用部

  1. 鍵の取り扱い
  2. 照明器具の消耗品の取り替え
  3. 電気器具・ベランダ・トイレの使用上の注意
  4. ペット飼育の禁止
  5. 騒音についての注意事項

 

生活上の注意点(共用部

  1. 共用部の私物放置の禁止
  2. 駐車場・駐輪場の使用方法
  3. インターネット・メールボックス・宅配ボックスの利用方法
  4. ゴミの出し方

 

緊急時の対応

  1. 電気がつかない
  2. ガスがとまったら
  3. 水が出ない
  4. 排水の詰まり
  5. 水漏れ

 

契約更新解約手続き

  1. 契約更新の手続き
  2. 解約の手続き
  3. 退去時の清掃のお願い
  4. 退去時の立会い
  5. 敷金の精算

 

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