相続によるトラブルは、仕事柄たくさん見てきました。
特に看病を「した」「してない」や資産を上手く分割できない、などが目立つ原因であった記憶があります。
回避するためには、現在所有している土地をそのままにするのか、何らかの活用をするのか、資産組替を行うのか、どの方法にするのか判断するために具体的な相続プランを作成する必要がでてきます。
そのプランを解説していきます。
この記事でわかること
- 節税効果の高い土地活用プラン
- 将来相続しやすい資産組替プラン
- 効果的な節税のための状況3点
相続プランを作成する為の重要3点項目とは?
相続プランを作成するためには、これまで紹介した以下3点をしっかりと把握しておく必要があります。
- 財産状況
- 家族状況
- 土地状況
これらの状況を把握していなければ、具体的なプランを立てることはできません。正確な相続の共有、効果的な節税対策を行うためにも、これら3点の状況確認は必須です。
相続プランに見本などはありません。なぜなら、財産状況や家族状況、土地状況は人それぞれ異なるためです。これらの状況に合わせてオリジナルの相続プランを立てる必要があります。プランを立てる際は、以下のように項目ごとに内容を作成していくといいでしょう。
- 家族構成(年齢、職業、住所、連絡先など)
- 資産構成(株式A社●●円、預金■■円、生命保険▲▲円など)
相続ケース
ここから、より具体的に家族構成や資産構成、よくある相談概要をもとに相続ケースを見ていきましょう。
よくある相談ケース1
- 家族構成(母:75歳、不動産賃貸業長男:55歳、海外在住長女:46歳、自営業)
- 資産構成(自宅、アパート、現預金7,000万円、株式200万円、生命保険1,500万円)
父は10年以上前に他界し、母は1人暮らしでアパート賃貸業、長男はアメリカで仕事をしていてこの先も海外在住予定、長女は自営業を営んでいる家族です。
母は父から相続した家で暮らしながらアパート賃貸業をしているので、年金+アパートの家賃収入があり、お金に特に不自由はありません。
また、父から相続した住居もローン等はなく、固定資産税やメンテナンス費用の負担だけです。
ただし、母は認知症気味になってしまいました。
認知症気味になってからは、アパートの管理がまったくノータッチになったり、銀行の入出金等ができていなかったりします。
子どもたちは、これ以上、母親が1人暮らしを続けるのは困難だと考え、老人ホームへと転居させました。
そのため、それまで母が住んでいた父から相続した家は空き家になりました。賃貸に出し運用しているアパートは全6室あり、5室が入居中です。
しかし、アパートは築40年以上経っており、老朽化が進んでいます。空き家になった住居についても、アパートと築年数がほとんど変わらないため、至るところで古さを感じます。
長男と長女は、専門家にも相談しながら相続プランを作成していきました。
父母の財産をすべて調べ、専門家に相続財産の評価を算出してもらうと約2億円ありました。そして、基礎控除等を差し引いた相続税予想額は約3,000万円と算出されます。
長男と長女は、2億円の相続があると聞いたときはとても驚きましたが、約3,000万円の相続税がかかると言われ、青ざめてしまいます。
また、3,000万円の相続税以外にもさまざまなコストがかかることが予想されます。
それは、住居とアパートのメンテナンス費用やリフォーム費用です。
どちらも築40年程度の築古物件となるため、適切な修繕やメンテナンスを実施しないと、大きな地震や台風など自然災害が発生した場合に危険です。
耐震性や耐久性、断熱性など、建物の性能を高いレベルで維持するためにも、これらの工事は必須です。
ただ、建物の状況によっては大規模な修繕やメンテナンス、リフォームとなるため相当なコストがかかってしまいます。
そして、現在アパートには入居者がいて家賃収入が入ってきますが、工事の規模によっては退去後に工事を始め、メンテナンス等が終了するまでは入居者確保はできません。
すると、その期間家賃収入が途絶えてしまいます。
相続税に加え、修繕やメンテナンス、リフォーム費用がかかり、家賃収入が途絶えるため、資金に余裕がないとキャッシュが不足してしまいます。
専門家からの提案
長男と長女は、相続について相談していた専門家から2つの提案を受けます。
①土地を活用する
また、新築の賃貸マンションとなることで、アパートよりも多くの家賃収入を得ることが可能です。
立地が良ければ、長期にわたり需要が見込めるため、この先安定したキャッシュフローを得ることができます。
このように、既存の建物を取り壊し、新たにマンションを建て運用することで、相続税を抑えながらも収入源を確保できるようになります。
②資産組替をする
そのため、空き家である住まいとアパートを売却し、将来分けやすい数の賃貸を購入します。
そうすることで、分割がしやすく揉める可能性が低くなります。
①の土地活用プランは高い節税効果が期待できるのがメリットです。
一方、②の資産組替プランは将来相続しやすいのがメリットになります。
結局、長男と長女は①と②のプランを総合的に判断し、②の資産組替プランで進めていくことにしました。
このように、相続プランを作る場合は、できれば専門家と一緒に考えることが大事です。そして、いくつかのプランを提案してもらい、相続人が総合的に判断してうえで決めたものであれば、後に揉める可能性も少なくなります。
土地活用をする場合
もし、上記のような相続プランを提案され、資産組替ではなく土地活用を選択する場合は、より具体的なプランを作成していきます。
土地の調査を行い、その結果をもとにして、どんな物件を建てるのか決めていきます。
どんな賃貸物件を建てるか決まってきたら、シミュレーションも行います。活用するからには収益が出ないと意味がありません。
「賃貸物件を建てれば節税できる」と税負担が軽くなることだけに安著していてはいけません。
せっかく、税負担が軽くなっても、賃貸物件が赤字であれば大変なことになります。
活用するからには、節税+賃貸運用の黒字を目指さなければいけません。
想定される家賃や入居率、経費、ローン手数料など、しっかりと考慮したうえで活用プランのシミュレーションを立てましょう。
楽観的なシミュレーションだと後で痛い目に遭うことになるため、やや厳しい条件で計画を立てることが大事です。
そのうえで、黒字化できるか、安定したキャッシュフローを確保できそうか確認し、判断をします。
土地活用の別のケースについても見ていきましょう。
土地活用の別ケース
- 家族構成(母:69歳、アパート賃貸業長男:33歳、会社員長女:30歳、主婦)
- 資産構成(自宅、駐車場、現預金1,000万円)
2年前に熟年離婚をした母と同居する長男。
そして、結婚して主婦をしている長女の3人家族です。
母の父の相続で得た家に暮らしています。
父から相続したときに多額の相続税がかかったこともあり、預金はかなり減ってしまいました。
現在は年金収入に加え、アパート賃貸による家賃収入を得て生活をしています。
しかし、家の固定資産税やメンテナンス費用もかかるため、ほとんど現金が手元に残りません。
長女は既に結婚していて家庭がありますが、長男は独身です。
仕事面でいろいろと抱え込んでしまい、体調を崩しています。仕事に復帰するのにも相当な時間がかかりそうです。
このような状況のため、もし母が亡くなり長男・長女に相続となった場合は相続税など金銭的な面が心配です。
そこで専門家に相続について相談を行いました。
まず、所有している自宅や駐車場の評価を行います。
家に関しては、同居人がいるため居住用小規模宅地等の特例が適用されますが、それでも相続税が発生します。
駐車場については評価は下がりません。
そのため、専門家は駐車場の土地を活用し、賃貸物件を建てることを提案しました。
土地の用途や建ぺい率、容積率などを考慮して、1K〜1LDKの単身者〜2人暮らし向けの間取りを中心とした賃貸アパートです。
部屋数は8戸で、建築費用は諸費用も合わせて約1億円と試算されました。
これらの費用はすべて銀行ローンで対応します。
全額銀行ローンを利用したとしても、想定する家賃収入からローンを差し引いても、4割程度は手元に残ります。
このような提案を受けたこともあり、賃貸物件を建てることにしました。
土地活用により、相続税は下がりますし、家賃収入も得ていくことができます。
土地活用プランナーの体験談
相続に関するトラブルは、仕事の中でいろいろ聞いてきたので「こういった方は相続で揉めるな」「こういうご家庭は相続で揉めることがないな」と感じ取ったことは何度もあります。
特に相続で揉めるのは兄弟間が非常に多いですから、兄弟で生前からきちんとどのような資産分割を行うのかを、相談しておけばトラブルを起こすことがなく、また兄弟仲が悪くなることがありません。
元々仲が良かった兄弟が、相続のせいで絶縁状態になってしまうのも何度か目にしたことがあります。
親が高齢になってくると、親がどのように子供に相続させるかを決めることができず、亡くなった後に兄弟で「自分の資産はこれだけだ」「自分は介護したからこれぐらいもらいたい」など揉めることが多いようです。
最近では終活という言葉が流行っていますが、できれば高齢になった時点で親と子供で相談して、どのように相続するのか、きちんと決めておきましょう。
特に不動産の場合は現金化するまでの時間かかりますし、土地を半分に分けることは、簡単にできるものではありません。
相続で揉めることが多い財産の一つといえるので、早めの相談が重要です。